ピロリ菌による胃粘膜の萎縮は脂質代謝にも悪影響を及ぼす可能性

ピロリ菌感染による様々な弊害

ピロリ菌は感染すると胃粘膜に繰り返し炎症を引き起こします。その炎症自体は大したものではないのですが、長い年月をかけて炎症を繰り返すうちに、やがて胃の粘膜組織は次第に痩せて薄くなり、萎縮した状態へと変質していきます。

この胃粘膜の萎縮した状態に、喫煙や飲酒、塩分の摂り過ぎ、ストレスなどの生活習慣に起因する様々な悪影響が加わることで、胃がんリスクが激増することがわかっています。

その一方で、ピロリ菌の感染は、胃粘膜の慢性的な炎症を引き起こすだけでなく、脂質代謝、つまり血液中に存在するコレステロールや中性脂肪などの脂質の量を正常に保つ機能にも悪影響を及ぼす可能性が示唆されていますが、これまでの研究では一貫した結論は得られていませんでした。

やはり胃粘膜の萎縮が脂質代謝に影響していた

そして今回、亀田総合病院附属幕張クリニックの島本武嗣氏、東京大学大学院消化器内科の山道信毅氏は、コレステロールなどの脂質関連値と胃粘膜の萎縮度などとの関連について検討した結果、胃粘膜の萎縮が脂質代謝に悪影響を及ぼす可能性が示されました。

この研究成果は、2010年の人間ドック受診者のうち、ピロリ菌除菌経験者、脂質異常症治療薬服薬者、脳血管および心血管疾患の既往歴のある者を除いた 5,917例を対象にしたものです。

その結果、HDL-C(善玉コレステロール)は、胃粘膜の萎縮の程度が進むにつれて減少し、LDL-C(悪玉コレステロール)は、軽度・中等度の萎縮で有意に減少するなど、全ての脂質関連値が胃粘膜の萎縮度と関連することが確認されたのです。

しかも、この脂質代謝に与える影響は、胃粘膜の萎縮度が高いほど大きいとの結果が得られたようです。

ピロリ菌の除菌は胃粘膜が萎縮してしまう前に

この記事の冒頭で触れたように、胃粘膜の萎縮が進む最大の要因はピロリ菌の感染ですから、ピロリ菌を除菌して胃粘膜の萎縮にストップをかけることは、将来の胃がん発症を予防するだけでなく、脂質代謝の改善にも繋がる可能性が出てきたわけです。

但し、萎縮してしまった胃粘膜を、元の状態に再生することは難しいことを考えると、胃がん予防のためにも、また脂質代謝改善のためにも、ピロリ菌の除菌治療は、高齢になって胃粘膜の萎縮が進んでしまった状態で実施するよりも、より早い段階で実施する方が得られる利益は大きいと言えます。

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category : 脂質異常症

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