高齢者の降圧薬を中止しても認知機能の低下を抑制できない

中年期の高血圧は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスク要因であるだけでなく、高齢になってから認知機能が低下するリスクを高める危険因子とされています。

ところが、高齢者を見た場合、逆に血圧が低いほど認知機能低下のリスクが高まると考えられています。その理由としては、高齢になると脳神経系の自己調節機能が低下するため、脳の血流量を十分なレベルに維持するためには、ある程度高めの血圧が必要であるなどの説が有力視されています。

つまり、高血圧を有する高齢者に対して積極的な降圧治療を行うことは、脳の血流量を低下させ、認知機能の低下をもたらす可能性があるのです。では、実際に降圧薬を服用している高齢者が、薬の服用を中止した場合、認知機能の低下を防ぐことができるのでしょうか?

この命題について今回、オランダの研究チームにより、軽度認知障害(MCI)と診断され、かつ高血圧をもち降圧治療を受けている75歳以上の高齢者385人を対象に、降圧薬の使用を中止した場合と継続した場合の、16週間後における血圧値や認知機能の変化を調べる調査が実施されました。

16週後の血圧の変化は次の通り。

16週時の血圧は、ベースラインより中止群は5.4/1.3mmHg上昇、継続群は2.0/1.3mmHg低下しており、両群間の差は収縮期血圧が7.36mmHg(95%信頼区間3.02-11.69、P=0.001)、拡張期血圧は2.63mmHg(0.34-4.93、P=0.03)になった。

そして同じく16週後の認知機能の変化は次の通り。

認知機能に関する複合スコアの変化には両群間に差がないことが判明。ベースラインからの変化は、継続群が-0.01(-0.16から0.14)、中止群は0.01ポイント(-0.14から0.16)であり、差は0.02(-0.19から0.23、P=0.84)と有意ではなかった。

つまり、降圧薬の服用を中止した場合、当然にしてそれまで抑えられてきた血圧の上昇があり、両群の間に収縮期血圧で7.36mmHg、拡張期血圧で2.63mmHgの差が出たにもかかわらず、認知機能のスコアは両群ともほとんど変わらなかったという結果が出たのです。

たとえ脳の血流量を増やしても、一度低下しはじめた認知機能に歯止めをかけることはできないのかも知れません。逆に、今回は16週での調査でしたが、より長期的に観察した場合、もしかすると降圧薬中止による顕著な認知機能の低下抑制効果が認められるかも知れません。

また、今回の調査は、認知症の前段階と言われる軽度認知障害患者を対象にしたものでしたが、認知症の症状が出ていない高齢者の場合は、どのような結果になるのかなど、さらなる研究に期待したいところですね。

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category : 高血圧症

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