嗅覚の衰えが軽度認知機能障害やアルツハイマー病発症に関連

いまだ根本的治療法が確立していない認知症を予防するためには、認知症予備軍とも言われる軽度認知機能障害(MCI)の段階で発見し、なるべく早期に治療を開始する必要があります。

その意味で、認知機能の低下や認知症を早期に発見するためのマーカーを見つけることが重要となってくるのですが、これまでの研究で、嗅覚障害と認知機能の低下や軽度認知機能障害、アルツハイマー型認知症との関連が示唆されていました。

そして今回、米の研究チームにより、平均年齢約80歳の高齢者、1430例を対象とした大規模調査が実施され、嗅覚障害と軽度認知機能障害との関連、さらに嗅覚障害とアルツハイマー型認知症への進行との関連が調べられました。

嗅覚障害と軽度認知機能障害との関連について

平均3.5年の追跡調査の結果、1430例のうち250例が新規に軽度認知機能障害(MCI)を発症。分析の結果得られた、それぞれの嗅覚レベルとMCIリスクとの関連は次の通りです。

嗅覚試験スコアの最高四分位(第4四分位;最も正答率が高い群)の健忘型MCIリスクを1.00とした場合,年齢を時間的尺度として,性,学歴を調整後のハザード比(HR)は,第3,第2,第1四分位の順に,それぞれ1.12(95%CI 0.65~1.92,P=0.68),1.95(同1.25~3.03,P=0.003),2.18(同1.36~3.51,P=0.001)であり,スコア低下に伴いリスクが上昇した(傾向のP<0.001)。

つまり、嗅覚が低下すればするほど、健忘型MCIリスクが上昇するという顕著な関連性が認められ、そのリスク差は最大で2倍以上であることが判明したのです。ちなみに、健忘型以外の軽度認知機能障害(MCI)と嗅覚低下には関連が見られなかったのだとか。

さらに、追跡開始時に軽度認知機能障害であった患者221例のうち、平均3.1年の追跡期間中に64例が認知症を発症しました。それぞれの嗅覚レベルと認知症への進行との関連は次の通りです。

嗅覚試験の最高四分位の進行リスクを1.00とした場合,第3,第2,第1四分位の順に,それぞれ,HRは3.02(95%CI 1.06~8.57,P=0.04),3.63(同1.19~11.10,P=0.02),5.20(同1.90~14.20,P=0.001)であった。

こちらも同様に、嗅覚の衰えが進めば進むほど、顕著にアルツハイマー病への進行率が高く、嗅覚の低下が最も大きかった人は、最も小さかった人に比べて最大で5倍以上に及んでいることがわかったのです。

これらの結果は、嗅覚に関係している脳領域の神経変性などが認知機能の変化に関連していると考えられています。今回の研究成果は、”におい”の判別試験が認知機能の低下を早期に発見するために有効である可能性を示したものだと言えます。

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category : 認知症・アルツハイマー病

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