心不全発症の原因となるタンパク質を特定!根本治療開発に期待

心不全とは、単一の病名ではなく、虚血性心疾患や心筋症、弁膜症などの様々な心臓の疾患によって、心筋の収縮力や拡張力が低下し、全身に血液を巡らせるという心臓本来の機能が十分に果たせなくなった状態を指します。

心不全のおよそ半分は、虚血性心疾患である狭心症や心筋梗塞によるもので、現在、重度の心不全患者には、主に投薬などの対症療法がとられていますが、5年生存率は約50~60%程度とも言われています。

今回、そんな心不全の発症に関して、最新の研究成果が発表されました。

心筋細胞から過剰に分泌されたタンパク質が心不全の原因に

熊本大学大学院生命科学研究部の尾池雄一教授らの研究グループは、心筋細胞から過剰に分泌されたタンパク質が、心筋の収縮力を低下させ、心不全発症の原因となっていることを発見しました。

そのタンパク質は、「アンジオポエチン様タンパク質2ANGPTL2)」と呼ばれる物質で、本来は組織の正常な働きを助ける働きをしています。

ところが、これが心筋細胞内で過剰に分泌されると、細胞内のカルシウム濃度の調節やエネルギー産生といった心筋の収縮力を維持するために重要な機能を低下させ、その結果として、心不全を引き起こすことがわかったのです。

それと同時に、老化した心筋細胞や高血圧などのストレスを受けた心筋細胞で、この「アンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)」の分泌が増加することを突き止めました。

「ANGPTL2」の産生を抑える遺伝子治療法を開発

そこで研究チームは、このタンパク質の生成を抑える病原性のないウイルスを遺伝子操作により作製し、これを心筋細胞に感染させることで、「ANGPTL2」の産生を抑制するという遺伝子治療法を開発しました。

実際に、心不全を発症したマウスにこの遺伝子治療を実施したところ、マウスの体内で作られる「ANGPTL2」の量が減少し、心不全の進行を抑えることが確認できたのだとか。

ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞でも有効性を確認

さらに、マウス実験だけでなく、ヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞を使った実験でも、同様の効果が認められたことから、人間の心不全患者に対しても、この遺伝子治療が有効である可能性が示されたと言えます。

今回の研究成果は、心不全の治療としてこれまで主に実施されたきた対症療法ではなく、遺伝子治療による根本的な心不全治療に繋がると期待されています。研究チームによると、3~5年以内の臨床試験を目指しているとのことです。

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category : トピックス

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