進行が早く、転移しやすい浸潤性膀胱がんに風邪薬の成分が有効である可能性

膀胱がんを大別すると、膀胱の壁である筋層には浸潤しない浅いがんと、筋層にまで到達する浸潤がんに分けられます。

浅いがんの代表である「表在性膀胱がん」は、膀胱の内側に向かってイソギンチャクやカリフラワーのように突出するもので、膀胱がんの約70%がこのタイプです。再発しやすいという特徴がある反面、予後は良好で、その多くはおとなしく浸潤することは珍しいとされています。

これに対して、膀胱の筋層にまで到達する「浸潤性膀胱がん」は、進行が早く、膀胱の壁を貫いて、膀胱の外の組織へ浸潤したり、リンパ節や肺、骨などにも転移を起こしやすく、また予後も不良であるため、効果的な治療法の確立が求められていました。

風邪薬の成分が浸潤性膀胱がんに有効である可能性

今回、北海道大学大学院医学研究科腫瘍病理学分野の田中伸哉教授らの研究チームにより、そんなやっかいな浸潤性の膀胱がんに関する、注目すべき最新の報告が寄せられました。

それは、既存の風邪薬の成分である「フルフェナム酸」が、膀胱がんの転移を抑制し、さらに抗がん剤に対するがん細胞の抵抗力を弱める可能性を示したというものです。

転移したがん細胞に多く発現する酵素を発見

研究チームは、ヒトの膀胱がん細胞をマウスの膀胱に移植して膀胱がんモデルを作成。その後、肺や肝臓、骨などへの転移を待って、原発巣としての膀胱と、移転先の臓器からそれぞれがん細胞を抽出して、移転したがん細胞だけに多く発現している分子を解析しました。

その結果、原発巣である膀胱のがん細胞に比べて、移転したがん細胞には「アルドケト還元酵素」が増加していることを突き止めました。さらに、この「アルドケト還元酵素」が、がん細胞の動きを高めて転移を促進し、抗がん剤に対するがん細胞の抵抗力を高めていることがわかりました。

そこで研究チームは、実際の膀胱がん患者25例の病理組織を調べたところ、同様の現象が確認できたことから、マウスの膀胱がんモデルだけでなく、ヒトの体内でも同じことが起こっていることが判明しました。

アルドケト還元酵素は風邪薬の成分でその働きを阻害できる

既存の風邪薬の成分である非ステロイド系抗炎症薬「フルフェナム酸」は、この「アルドケト還元酵素」の働きを阻害することがわかっています。つまり、今回の研究成果は、このフルフェナム酸が膀胱がんの治療薬として有効である可能性を示したと言えますね。

今後、これまでの治療では予後が思わしくなかった浸潤性膀胱がん患者の治療成績向上を目的として、このフルフェナム酸を、これまでの治療に使われている抗がん剤と併用するなどの臨床研究が進むことが期待されています。

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category : がん治療・がん研究全般

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