時差ぼけの特効薬に期待!体内時計のまったく新しい仕組みを解明

脳の奥底の視床下部にあって体内時計の中枢を担い、日夜を問わず強力な概日リズムを刻み続けている視交叉上核。その大きさこそほんの2ミリ程度に過ぎませんが、約1万個もの神経細胞が集まってできています。

視交叉上核を構成する神経細胞群は、全体として体内時計を構成する部品というわけではなく、そのそれぞれがが独自にリズムを刻む時計で、言ってみれば視交叉上核は、たくさんの小さな時計が集まった大時計だとも言えますね。

また、体内時計は視交叉上核だけでなく、実は体中の全ての細胞に存在していて、それぞれの細胞に備わっている体内時計も、それぞれ独自に時を刻んでいます。つまり、そのままだとやがて体のあちこちでバラバラな時を刻んでしまうという困った事態に陥ってしまうわけです。

そこで体内のあらゆる細胞で時を刻んでいる体内時計を、定期的に調節し、体内の全ての体内時計を合わせているのが視交叉上核というわけです。

たくさんの小さな時計を合わせるには情報のやり取りが必要

少し話がそれてしまいました。視交叉上核に話を戻して・・・
約1万個もの神経細胞が集まってできている視交叉上核ですが、体内時計の中枢を担う”大時計”が、それぞれの細胞でそれぞれ違った時を刻むわけにはいきません。たえず細胞同士の時を合わせるために盛んに細胞間で情報のやり取りが行われているわけです。

バソプレシンという神経伝達物質に注目!

で、その細胞間の情報のやり取りには様々な神経伝達物質が利用されていますが、研究グループは神経伝達物質の中の「バソプレシン」という物質に注目しました。そして、このバソプレシンの受け手で神経細胞群に情報を伝える受容体を特定し、その機能を遺伝子操作で失わせたマウスを作り出して次のような実験に臨み、注目すべき実験結果を得たわけです。

午前8時から午後8時までを明るく、それ以外を暗くした室内で2週間飼育した後、午前0時から正午までを明るくする環境に切り替えて「時差」を作り出した。バソプレシンが働かないマウスは翌日から新しい環境に順応したが、普通のマウスは適応に10日ほどかかった。

つまり、視交叉上核の神経細胞間の情報伝達に必要な伝達物質バソプレシンを、上手く受け渡しできないよう遺伝子操作されたマウスは、本来は強力であるはずの体内時計の影響をろくに受けずに、明るさの変化にのみ素直に反応できたわけです。

逆に通常のマウスは、明るさの大きな変化があったにもかかわらず、視交叉上核の神経細胞の間でバソプレシンが上手く受け渡しされた結果、体内時計が変わらず機能し続け、目から入る光に左右されずにそれまでの体内リズムを守ろうとしたため、時差に適応するのに10日もの時間を費やしたと言うことになります。

まったく新しい時差ぼけの治療薬開発に期待

また、先の実験では遺伝子操作をしたマウスを利用しましたが、時差ぼけをした通常のマウスにバソプレシン受容体の機能を阻害する化学物質を投与することで、マウスの時差ぼけを軽減することにも成功しているのだとか。

ヒトにもマウスと同様の仕組みがあると想定されており、この視交叉上核の神経細胞相互の神経伝達をターゲットにした、まったく新しい創薬の可能性が開かれたことになりますね。海外旅行の時差ぼけだけでなく、昨今問題になっているシフトワーカーの睡眠障害や生活習慣病の予防や治療薬の開発につながるものとして期待されています。

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category : 体内時計

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