歯周病菌「ジンジバリス菌」が作る酪酸がアルツハイマー病の一因に

歯周病の原因菌であり、強い悪臭を放つ歯周病菌「ジンジバリス菌」などが作り出す“ 酪酸が、認知症の一種で、その半数以上を占めるとされているアルツハイマー病を引き起こす一因となっている可能性が示されました。

これまでにも、様々な研究によって歯周病とアルツハイマー病との関連性については指摘されていました。

ところが、実際の動物の体の中で歯周病とアルツハイマー病との関連を示す現象を捉えたのは、今回の日本大学歯学部の落合邦康特任教授らによる研究が初めてなのだとか。

アルツハイマー病に対しては、現在様々な角度から研究が進められており、これまで当サイトでも度々取り上げてきましたが、残念ながらその発症要因は、いまだ完全には解明されていません。

現在考えられている仮説の一つに、「酸化ストレス仮説」があります。

脳は体重の約2%の重量で、全身が消費する酸素全体の約4分の1という大量の酸素を消費しています。しかも、酸化されやすい不飽和脂肪酸が豊富な上に抗酸化酵素の発現は低いことから、脳は酸化ストレスに対して非常に脆弱で、このことがアルツハイマー病発症の一要因となっているのではないか…というものです。

研究チームはこれまでの研究で、歯周病の原因菌である「ジンジバリス菌」などが作り出す酪酸 ”が細胞内に取り込まれると、「鉄分子(ヘム)」「過酸化水素」「遊離脂肪酸」が過剰に作り出され、細胞に酸化ストレスを起こして壊してしまうことを明らかにしていました。

そこで研究チームは、健康なラット3匹の歯肉に酪酸を注射し、酪酸がラットの脳にどのような影響を与えるかを調べました。その注目すべき結果は次の通りです。

酪酸を注射したラットは、通常のラットに比べ、全ての部位で平均35~83%も「ヘム」「過酸化水素」「遊離脂肪酸」の濃度が上昇していることが分かった。

中でも海馬での上昇率が最も高く、ヘムは平均79%▽過酸化水素は平均83%▽遊離脂肪酸は平均81%--濃度が上昇していた。

また、細胞の自殺を誘導する酵素「カスパーゼ」の活性を測定すると、海馬で平均87%増加していた。

さらに、アルツハイマー病の患者の脳神経細胞内では、物質輸送に関わるたんぱく質「タウ」が異常に蓄積するが、酪酸を注射したラットは通常のラットに比べ、海馬で平均42%もタウの量が増加していた。

この研究結果について研究チームは、ラットの歯肉に注射した酪酸が血流に乗って脳内に到達し、酸化ストレスに弱い脳で、様々な異常が引き起こされている可能性があるとの見方を示しています。

実際、歯周病患者では歯と歯茎の間の「歯周ポケット」から、歯周病のない人の10~20倍もの酪酸が検出されるとの報告もあります。

つまり、歯周病をもっているということは、その原因菌によって作られる大量の酪酸が長期間に渡って脳に運ばれ続ける可能性があることを意味し、これがアルツハイマー病を発症する一因となることは十分に考えられます。

研究チームは今後、歯肉から脳内にどの程度の酪酸が入り込むのかを調べると同時に、酪酸を注射した動物がアルツハイマー病を発症するかどうかを検証する予定です。

歯周病はアルツハイマー病に限らず、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病など様々な生活習慣病のリスク因子であると考えられています。今後はますます歯周病ケアの重要性が高まりそうですね。

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+
このエントリーをはてなブックマークに追加

category : 認知症・アルツハイマー病

このページの先頭へ