がんを内側から破壊!ホウ素中性子捕捉療法の臨床試験で驚きの結果

がん治療として現在、広く行われている放射線治療は、エックス線やガンマ線と呼ばれる放射線を悪性腫瘍に照射して腫瘍細胞を破壊するものですが、悪性腫瘍の多くは広い範囲に微小浸潤しているため、腫瘍細胞を完全に破壊するためには、広い範囲の正常組織に大量の放射線を照射する必要があります。

放射線治療により、がん細胞を徹底的に叩こうとすればするほど、腫瘍細胞の周りにある正常細胞にも多くのダメージを与えてしまうことになり、このことが放射線治療の一つの限界となっていました。

今回、そんな従来の放射線治療の欠点を補い、正常細胞にはあまり損傷を与えることなく、がん細胞のみを選択的に狙い撃ちできる放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法BNCT)」の臨床研究結果が、大阪大や京都大などの研究チームによりまとめられました。

「ホウ素中性子捕捉療法」とは?

「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」とは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素薬剤を被験者にあらかじめ点滴しておき、体外からエネルギーの低い中性子線を1時間ほど照射するというものです。

がん細胞に取り込まれたホウ素は、中性子を吸収すると核分裂を起こして、別の放射線を出すのですが、ホウ素から放出される放射線の殺傷力は細胞1個分ほどの範囲しか届かないため、結果的にホウ素を取り込んでいる細胞のみが死滅し、周囲の正常細胞にはダメージを与えにくいという最大の利点があります。

約12年に及ぶ臨床研究の驚きの結果が明らかに

そして今回、研究チームにより、頭部頸がんの末期患者を対象に、2001年から実施されていた「ホウ素中性子捕捉療法」の臨床研究の結果がまとめられたわけです。その注目すべき研究結果は次の通りです。

13年2月までの約12年間に治療を受けた37人中、20人(54%)で腫瘍が消え、13人(35%)で腫瘍が縮小した。3人は効果が確認できず、1人は治療後、診察に来ず評価できなかった。

半数以上の被験者の腫瘍が消えてしまったことも驚きですが、約9割にも及ぶ被験者に顕著な治療の有効性が確認されたことは素晴らしいですね。ちなみに、末期の頭頸部がん患者に対して、抗がん剤の投与のみの治療を続けた場合の5年生存率は5%以下とされている中で、今回の臨床研究における生存率は30%にも及んだのだとか。

エネルギーの低い中性子線は、体表に近い部分しか届かないため、今回の臨床研究では、舌や顎、耳の舌などにできる頭頸部がんの患者が対象になりましたが、今後は治療が難しい他のがんに使うことも検討されているようです。

もちろん中性子線による合併症の恐れもあり、安全性の検証も必要ですが、少なくとも「ホウ素中性子捕捉療法」は、従来であれば他に治療法が無かった多くの末期がん患者を救ったと言うことができます。今後のさらなる研究に大いに期待しましょう。

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category : がん治療・がん研究全般

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